3 商品先物取引業者の不法行為責任

 商品先物取引が極めて危険な取引であることから、顧客保護のための種々の法的規制等が行われています。

 商品先物取引業者とその従業員(外務員)には、そのような法の規制等を遵守することはもとより、商品先物取引に十分な知識・経験を有しない者が安易に取引に手を出すことがないよう、また、顧客本人の予想しない大きな損害を被らせることがないよう努めるべき、高度の注意義務が課せられていると解されています(商品先物取引法213条も「商品先物取引業者並びにその役員及び使用人は、顧客に対して誠実かつ公正に、その業務を遂行しなければならない。」と規定しています)。

 商品先物取引業者側が、このような注意義務に違反し、不当・違法な行為によって顧客に損害を被らせた場合は、顧客の損害を賠償する責任(不法行為責任)を負います。

 そこで、一般人が商品先物取引業者の外務員から勧誘を受けて商品先物取引を行い損害を被った場合、取引勧誘段階、取引開始段階、取引継続段階、取引終了段階の全部を通じて、先物取引業者側に不当・違法な行為がなかったかをチェックします。

 実際に行われた商品先物取引が、勧誘から取引終了までを通じて見て、商品先物取引業者側の一連の違法・不当な勧誘や受託業務遂行行為によるものといえる場合は、商品先物取引業者側の一連の行為は、社会的相当性を欠く違法なものであって、全体として不法行為を構成し、顧客に対する損害賠償義務を負うということになります。

 このような一体的不法行為論は、裁判実務上定着しています(一例として日光商品事件最高裁平成7年7月4日判決・NBL590号60頁)。

 さて、商品先物取引業者側に一連の不当・違法な行為がなかったかをチェックする方法ですが、次の2つの観点からチェックすることになります。

 1つ目は、取引および計算関係に認められる客観的特徴を指標とするチェックで、裁判実務上も定着しています。
 この指標となる客観的特徴には各種あり、代表的な指標を挙げると、特定売買(経済的合理性が乏しい5種類の取引パターン)、手数料損金比率(差引損金の中に占める手数料の割合)、売買回転率、利乗せ満玉といわれるものなどがあります。
 これらは、顧客にとって有害無益、不合理な取引内容となっていないか、商品先物取引業者の単なる手数料稼ぎに利用されていないかを見る指標であり、商品先物取引業者の手数料稼ぎのために顧客の利益が犠牲にされていないかを見ることができます。

 2つ目は、商品先物取引業者側が顧客保護のための種々の法的規制等を守っていたか否かのチェックです。
商品先物取引業者がこれらの規制等に違反することは、顧客保護をないがしろにするものであり、不法行為における違法性を判断する上での重要な要素となります。


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