2 商品先物取引業者と一般顧客の利益相反関係

 商品先物取引は、商品取引所(現在は東京商品取引所、大阪取引所、堂島取引所の3つ)で行われます。

 一般人が商品先物取引を行う場合は、主務大臣の許可を受けた商品先物取引業者に、商品取引所での売買取引を委託することによって行いますので、商品先物取引業者に対して、取引数量に応じた委託手数料を支払わなければなりません。

 この委託手数料は、建玉に係る委託手数料と仕切りに係る委託手数料の両方で、これが仕切り(決済)の時に徴収されています。

 委託手数料を営業収益の柱にしている商品先物取引業者としては、顧客に売買を行わせれば行わせるほど多額の委託手数料を獲得できるため、ここに、顧客の利益・不利益にかかわらず、顧客に頻繁に多量の売買を行わせて委託手数料を稼ごうという動機が生まれる素地があります。

 これに加えて、商品先物取引の場合、取引の仕組みが複雑で、取引手法や損益計算方法を一般人が理解するのは容易でないこと、商品先物市場の価格変動要因は複雑多岐であり、一般人が価格変動を的確に予測することは、ほとんど無理であることなどから、一般の顧客は、商品先物取引業者から勧められた売買に経済的合理性があるのかどうかも理解できないまま、それにしたがっているという実情があります。

 こうして、商品先物取引においては、商品先物取引業者が、顧客の投資経験・知識の欠如に乗じて、個々の売買の経済的合理性を考えずに、顧客に頻繁かつ多量の売買を行わせ、自らは多額の委託手数料を稼ぎながら、他方で顧客に多額の損失を被らせるということが、起こることになります。

 このように、商品先物取引業者と一般の顧客との関係は、本質的に利益相反関係にあると評価することができます。


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