民法改正により債権の消滅時効が変わりました

(神奈川総合法律事務所だより2020年8月発行第61号に掲載した記事です。)

 使用者の義務違反によって労働災害(労災)が発生した場合、労災保険による補償とは別に、使用者には、被災労働者に対する損害賠償責任が発生します。この使用者の損害賠償責任には、債務不履行に基づく責任と不法行為に基づく責任の2種類があります。

 使用者が労働契約上、労働者の生命・身体・健康を保護すべき義務(安全配慮義務)を負っているのに、その義務を履行せず、それによって労災が発生した場合、債務不履行に基づく損害賠償責任が発生します(民法415条)。

 また、使用者の故意又は過失により労災が発生した場合、不法行為に基づく損害賠償責任が発生します(民法709条)。使用者が雇っている者の故意又は過失により労災が発生した場合にも、使用者には、不法行為(使用者責任)に基づく損害賠償責任が発生します(民法715条)。

 債務不履行に基づく損害賠償責任と不法行為に基づく損害賠償責任は、同時に発生することが多いです。

 さて、ここから時効の話をします。 続きを読む

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欠陥建築被害に関する紛争と平成29年民法改正

 平成29年に民法の債権編を中心とする改正法が成立し、一部の規定を除き、2020年(令和2年)4月1日から施行されています。

 法務省のサイトでは、この改正について、次のように紹介されています。
 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html

「民法のうち債権関係の規定(契約等)は、明治29年(1896年)に民法が制定された後、約120年間ほとんど改正がされていませんでした。今回の改正は、民法のうち債権関係の規定について、取引社会を支える最も基本的な法的基礎である契約に関する規定を中心に、社会・経済の変化への対応を図るための見直しを行うとともに、民法を国民一般に分かりやすいものとする観点から実務で通用している基本的なルールを適切に明文化することとしたものです。」

 この改正により、売買契約と請負契約に関する規定も、かなり改正されました。

 欠陥建築の被害に関する紛争は、建物建築工事請負契約や建物売買契約を基礎としているため、この改正による影響を大きく受けます。

 改正法附則の34条1項には「施行日前に贈与、売買、消費貸借(旧法第589条に規定する消費貸借の予約を含む。)、使用貸借、賃貸借、雇用、請負、委任、寄託又は組合の各契約が締結された場合におけるこれらの契約及びこれらの契約に付随する買戻しその他の特約については、なお従前の例による。」と定められていますので、2020年3月31日以前に契約を締結した事案には改正前の民法の規定が適用され、同年4月1日以後に契約を締結した事案には改正後の民法の規定が適用されます。

 この点について、所属事務所のHPで解説しましたので、よろしければご覧ください。

【解説】欠陥建築・欠陥住宅の被害を受けたら(2020/3/31以前に締結した契約の場合)
【解説】欠陥建築・欠陥住宅の被害を受けたら(2020/4/1以後に締結した契約の場合)

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顧客等によるハラスメント

(神奈川総合法律事務所だより2020年1月発行第60号に掲載した記事です。)

 昨年(2019年)10月、京都で開催された日本労働法学会第136回大会において、ワークショップの一つに報告者の一人として参加させていただきました。テーマは「顧客等によるハラスメントと法的課題」でした。
 これは、一部の顧客等の迷惑行為によって、接客業務に従事している労働者の尊厳や人格権が侵害されている問題です。「カスタマーハラスメント」と呼ばれることもあります。

 流通業、サービス業の労働組合を多数擁する産業別労働組合であるUAゼンセン(全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟)が、接客対応に従事する流通部門の組合員を対象に2017年に実施した「悪質クレーム(迷惑行為)アンケート調査」によれば、168組合から49,876件の有効回答があり、その70%にあたる34,984人が顧客等による迷惑行為を経験したと回答しています。迷惑行為の中で最も多いのは「暴言」で、迷惑行為を経験した人の67%にのぼります。その次は、「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」が39%、「権威的(説教的)態度」が36%、「脅迫・威嚇」が35%、「長時間拘束」が27%、「セクハラ行為」が13%、「金品の要求」が8%、「暴力行為」が5%、「土下座の強要」が4%と続いています。
 アンケート結果には、労働者の人格を傷つける酷い実例が多数紹介されています。 続きを読む

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