この1年間の医療事故調査制度の概況
「医療事故調査制度」が開始されてから、本年(2016年)10月1日で1年を迎えました。
「医療事故調査制度」とは、医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い、その調査報告を厚生労働大臣が指定した第三者機関(医療事故調査・支援センター)が収集・分析することで、再発防止につなげ、医療の安全を確保するという制度です。
対象となる医療事故は、「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたものとして厚生労働省令で定めるもの」に限定されています。
医療事故調査・支援センターに指定されている第三者機関は、一般社団法人日本医療安全調査機構(東京都港区所在)です(2015年8月17日公示)。
同機構からは、毎月の末日時点の医療事故調査制度の現況(医療事故報告件数、院内調査結果報告件数、相談件数、センター調査の依頼件数など)が発表されています。
https://www.medsafe.or.jp/modules/news_bk/
10月11日に発表された本年9月末時点での「医療事故調査制度の現況報告(9月)」によれば、制度開始からの1年間の各累計について、医療事故報告は388件、院内調査結果報告は161件、相談は1820件、センター調査の依頼は16件(うち遺族からの依頼は13件)となっています。
相談1820件のうち、医療事故報告の対象となるか否かの判断に関するものは753件、院内調査に関するものは518件、医療事故報告の手続に関するものは514件となっています(複数計上あり)。
https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/houdoushiryo20161011.pdf
医療法施行規則の一部を改正する省令の施行とそれに伴う留意事項等
本年6月24日、医療事故調査制度の運用の改善を図るため、医療法施行規則の一部を改正する省令(平成28年厚生労働省令第117号)が公布されましたが、この改正省令では、医療事故調査等支援団体による協議会の設置が定められました。
医療事故調査等支援団体とは、病院等の管理者から医療事故調査を行うために必要な支援を求められたときに支援を行う団体で、厚生労働大臣が定めた団体です(医療法第6条の11第2項)。改正省令では、この団体が共同で協議会を組織し、そこで情報共有や意見交換ができるようにしました。
また、改正省令の公布と同日、厚生労働省医政局総務課長から各都道府県医務主管部(局)長宛てに、「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う留意事項等について」と題する通知(医政総発0624第1号)が行われました(地方自治法第245条の4第1項の規定に基づく技術的助言として)。
同通知では、上記の協議会(「支援団体等連絡協議会」と呼び、各都道府県ごとの地方協議会と全国的中央組織としての中央協議会の2種類を設置することが望ましいとされています。)は、病院等の管理者が、医療事故報告の対象となるか否かの判断や医療事故調査等を行う場合に参考とすることができる標準的な取扱いについて意見の交換を行うこととされました。
これは、前記の医療事故調査・支援センターへの相談内容の動向を踏まえ、医療事故報告の対象となるのか否かの判断や、院内調査の方法などについて、ばらつきを押さえ標準化していくことが目的だと思われます。
また、同通知では、医療事故調査・支援センターに対して遺族等から相談があった場合、医療安全支援センター(医療法第6条の13第1項に基づき、医療の安全の確保に関し必要な措置を講ずるため、都道府県等に設けた施設)を紹介するほか、遺族等からの求めに応じて、相談の内容等を病院等の管理者に伝達することとされました。
これにより、遺族が医療機関に直接伝えづらいことも、医療事故調査・支援センターに相談し、同センターから医療機関に伝達してもらうことが可能となりました。
さらに、同通知では、病院等の管理者が、遺族等から医療事故報告の対象となる医療事故が発生したのではないかという申出があった場合で、医療事故には該当しないと判断した場合には、遺族等に対してその理由をわかりやすく説明することとされました。
この2つは、患者の遺族にとって、知っておいた方がよいと思われる事項です。