<欠陥建築被害>

icon_148270_128 残念なことですが、世の中には、欠陥を抱えた建物が多数存在しています。
 その被害を回復するため、建築専門家が建物調査を実施した案件を中心に、訴訟等に取り組んでいます。

 普通の消費者にとって、住宅の取得は一生に一度の高額な「買い物」であるにもかかわらず、建築に関する専門的知識がないことから、取得した住宅に隠れた重大な欠陥があっても、気づかないことが多いです。もし後で気づいた場合でも、独力で建設業者等にその欠陥を認めさせることが困難です。

 建物としての基本的な安全性を損なう欠陥、建物の耐久性及び衛生を損なう欠陥など、重大な欠陥がありながら、消費者に専門的知識がないのをよいことに、建設業者等が責任を認めず、膠着状態に陥ることがよくあります。

 そのような場合、消費者側としては、建設業者等の責任を明らかにするために、訴訟等の法的手続をとらざるをえません。

  消費者側の代理人として訴訟を行った事例としては、次のようなものがあります。

  神奈川県内・K邸(防火構造の基準に不適合など)

  準防火地域内の木造軸組工法2階建ての注文住宅。工事代金(残代金)を請求された注文者の代理人として関与。外壁・軒裏・庇裏のモルタル厚不足、管柱の欠損等の欠陥があり、それらをもとに法律的主張を組み立て。

  東京都内・Nビル(耐火建築物の基準に不適合など)

 鉄筋コンクリート造・地下1階・地上7階建てで塔屋階がある建物。工事代金(残代金)を請求された注文者の代理人として関与。吹付けロックウール工法により施工された耐火被覆の厚さが大幅に不足しているなどの欠陥があり、それらをもとに法律的主張を組み立て、逆にこちらから損害賠償請求訴訟を提起。

  神奈川県内・F邸(欠陥リフォームによる建物強度低下)

 木造住宅リフォーム工事の注文者の代理人として関与。基礎と土台の緊結不良、土台の切断、柱の撤去などのずさんな工事により、建物の強度が著しく低下させられたため、損害賠償請求訴訟を提起。

  神奈川県内・A邸(防水不良、排水不良など)

 鉄筋コンクリート造・地下1階・地上2階建ての住宅建物。防水不良による地下室への漏水、地下排水の逆流、リビングへの漏水、浴室排水の不良など、多数の欠陥があり、注文者の代理人として損害賠償請求訴訟を提起。

  神奈川県内・F邸(防水不良による雨漏りなど)

 木造軸組工法2階建ての注文住宅。防水不良による雨漏りなど、複数の欠陥があり、注文者の代理人として損害賠償請求訴訟を提起。

  愛知県内・T邸(構造上の欠陥など)

  木造軸組工法2階建ての注文住宅。耐力壁の不良(水平構面との一体化が欠如、面材固定釘の間隔不良)、重ね梁の緊結不良を中心とする構造上の欠陥に加え、外壁の防火被覆の欠落、断熱工事の不良などの欠陥もあり、注文者の代理人として損害賠償請求訴訟を提起。

  愛知県内・O邸(防火構造の基準に不適合など)

 準防火地域内の木造軸組工法2階建ての建売住宅。①外壁が防火構造の基準に適合していない(防火被覆石膏ボードの欠落)、②基礎コンクリート鉄筋かぶり厚さ不足、③基礎の鉄筋の切断、④構造金物の不備、⑤耐力壁を構成する土台の欠損など、多数の欠陥があり、買主の代理人として損害賠償請求訴訟を提起。

  神奈川県内・N邸(構造耐力の欠損、準耐火構造の基準に不適合など)

 準防火地域内の木造軸組工法3階建ての注文建築。工事代金(追加代金)を請求された注文者の代理人として関与。①基礎・土台・柱・耐力壁の欠損、②耐力壁の面材欠落、③外壁・間仕切壁・床・屋根・階段・設備配管の防火区画貫通部において準耐火構造になっていないなどの欠陥があり、それらをもとに法律的主張を組み立て、逆にこちらから損害賠償請求訴訟を提起。

  神奈川県内・S邸(擁壁の転倒、構造上の欠陥など)

 造成地上の木造枠組壁工法2階建ての建売住宅。①鉄筋コンクリート造擁壁の転倒、②建物の基礎構造が建築確認申請の仕様と異なる、③壁材の緊結不良(緊結用ネジの間隔不良)、④壁材の一部欠損、⑤構造金物の一部施工不良など、多数の欠陥があり、買主の代理人として損害賠償請求訴訟を提起。

  神奈川県内・Iマンション(構造スリットの欠落、消防法令違反、各種目地の不良など)

  鉄筋コンクリート造・地上6階建ての共同住宅(マンション)。共用部分に、建物としての基本的な安全性を損なう欠陥、建物の耐久性及び衛生を損なう欠陥などがあり、各専有部分にも共通する欠陥があるため、管理組合法人及び区分所有者らの代理人として、損害賠償請求訴訟を提起。

 これらの訴訟に関与して感じるのは、構造上の欠陥や防火上の欠陥は、建物としての基本的な安全性を損なう重大な欠陥であるにもかかわらず、外側から目視できない位置にあって、平時には現象として表に現れることもないため、居住者から気づかれにくいということです。
 他の欠陥の現象が表に現れたのをきっかけに建物全体を詳細に調査し、これらの隠れていた重大な欠陥が発見されたというケースがあり、もし建物調査を行っていなかったらと考えると、実に恐ろしいです。
 いずれにしても、能力と実績のある建築専門家に調査を依頼できるかどうかにかかっています。


  所属事務所のHPに掲載した建築関係の記事

【解説】 欠陥建築・欠陥住宅の被害を受けたら(2020/3/31以前に締結した契約の場合)
【解説】 欠陥建築・欠陥住宅の被害を受けたら(2020/4/1以後に締結した契約の場合)
【解説】 建築士の責任
【解説】 欠陥建築問題-表に現れていない欠陥の怖さ-(2012/1事務所だより)
【解説】 構造スリットをご存じですか(2017/1事務所だより)
【解説】 マンション欠陥訴訟奮闘記(2019/1事務所だより)
【解説】 マンション欠陥訴訟のその後(2021/1事務所だより)


  ブログ