杭工事データ偽装事件から考える欠陥建築問題

(神奈川総合法律事務所だより2016年1月発行第52号に掲載した記事に加筆しました。)

 昨年秋、横浜市都筑区の大規模マンションで、基礎杭の一部が地盤の支持層に届いておらず、しかも基礎杭の施工報告書にデータの転用・加筆があったという問題が、大きく報道されました。
 そして、この物件、この施工会社にとどまらず、他の物件や他社の工事でも、基礎杭の施工報告書でデータの流用や改ざんが横行していることが、次々と報道されました。
 基礎杭は、マンション建物の「構造耐力上主要な部分」であり、「建築物の自重若しくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるもの」です(建築基準法施行令1条3号)。居住者等の生命、身体、財産の安全を、建築物の最下部で支えていることになりますので、そのような部分の欠陥は究極の欠陥であるともいえます。
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医療事故調査・報告の制度が10月から始まります

医療法の一部改正による医療事故調査・報告制度の開始

 2014年、「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律案」が可決され、医療法の一部が改正されました。

 これにより、医療法第6条の10以下に、医療事故調査・報告制度が定められました。

 この制度は、平成27年(2015年)10月1日から施行されます。
 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061201.html
 
 この制度の目的は、医療事故が発生した医療機関において院内調査を行い、その調査報告を厚生労働大臣が指定した第三者機関(医療事故調査・支援センター)が収集・分析することで、再発防止につなげ、医療の安全を確保することであるといわれています。

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造影剤ウログラフィン誤使用の報道に思う

今年(2014年)4月19日の新聞報道

 国立国際医療研究センター病院(東京都新宿区)で、入院中の女性(78)が検査で誤った造影剤を注入され、16日に死亡していたことがわかった。同病院が18日、発表した。届けを受けた警視庁は、業務上過失致死の疑いで捜査を始めた。

 同病院によると、女性は腰や脚の痛みを訴え、1泊2日の予定で16日に検査入院した。痛みの原因を調べるため、同日午後2時ごろからX線検査を開始。その際に女性担当医(29)が造影剤「ウログラフイン」を脊髄(せきずい)に注入した。

 検査は午後4時ごろに終わり、まもなく女性が両脚に痛みを訴えた。30分後には意識を失い、午後8時すぎに死亡した。その後、病院側は担当医がウログラフインを脊髄に注入したことを把握したという。

 ウログラフインは尿路などに使われる造影剤で、脊髄への注入は禁止されている。担当医は同病院の整形外科で研修中の5年目の医師で、この検査をメーンで担当するのは初めてだった。担当医を指導する立場だった女性患者の主治医は現場にいなかったという。

 本来使うべき造影剤を使わなかったことについて、担当医は「造影剤は脊髄用も同じだと思っていた」と説明しているという。18日記者会見を開いた、中村利孝院長は「重大な過誤があったのは事実。誠に申し訳ありません」と謝罪した。

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